8 Jul 2016
目次
産後の腰痛の原因と対処法は?いつまで続くの?
「出産が終われば、楽になってくると思っていたのに腰痛が・・・」「赤ちゃんの抱っこが辛い」と感じておられる産後ママも少なくありません。
妊娠経過中に現れる身体の様々な変化とそれがきっかけとなって現れるマイナートラブルは、出産によって妊娠が終了すると徐々に退行(軽減)していくものと考えられています。この期間を産褥期(さんじょくき)といい、産後6週間~8週間がこの時期に当たります。産後の腰痛の多くは妊娠中の体形・姿勢の変化、大きく成長する子宮の影響から起こるものであり、出産すれば軽減していくことが多いですが、中には産後も腰痛がなかなか軽減しないという方の相談を受けることもあります。産後の腰痛の主な原因については様々なものがありますが、その中でも代表的なものについてご紹介します。
◆ 筋力低下
産後の腰痛は、骨盤を取り巻くたくさんの筋肉と靭帯の筋力の低下からくる場合が多くあります。
一般的にはこの状態を「出産により骨盤が開いた状態」と言われたりしますが、骨盤自体は肘や膝の関節のように自由に動き開いたり閉じたりするものではありません。ですが、その周囲の筋肉や靭帯は妊娠中あまり積極的に動かさない部分なので、妊娠中に徐々に筋力を失っていきます。そして、子宮が大きく成長するにしたがってゆっくりと引き伸ばされることによって、痛みが生じてしまうのです。このような場合は筋力のサポートのために骨盤ベルトやサポーターといったものを使うことで、痛みが緩和されます。産後の生活が徐々に妊娠以前の状態に戻っていけば筋力も徐々に回復していき、腰痛も軽減されてきます。産後の入院中に産褥体操を行う医療機関は少なくなってきましたが、産褥体操は足先、手先といった体幹から遠い筋肉から徐々に動かしていく産後の身体に無理のない体操ですので産後腰痛の予防・改善に効果的です。
また、骨盤を取り巻く靭帯の中でも左右の恥骨を繋ぐ靭帯(恥骨結合)は、分娩の際にわずかにゆるむ産婦さんもおられますが、その場合は腰痛だけでなく恥骨部分の激痛が特徴的に現れます。このように恥骨部痛がある場合は、ストレッチや運動ではなく安静が必要となりますので注意してください。
◆育児の姿勢
長時間の抱っこや授乳などの際、姿勢は赤ちゃんが中心で、ママにとっては腰部や背部に負担のかかる姿勢が多いため腰痛が起こることがあります。腰痛がひどい場合は、赤ちゃんのお風呂やおむつ交換など旦那さまやご家族様に赤ちゃんのお世話をお願いすることも必要でしょう。また、同じ姿勢が長時間続かないよう工夫もしてみるといいでしょう。
◆妊娠以前からの疾患の悪化
椎間板ヘルニアや坐骨神経痛、腰椎すべり症といった疾患に妊娠以前から罹患されておられる方は、妊娠・分娩が影響して状態が悪くなる場合があります。このような方は、迷わずまずは整形外科の受診をおすすめします。
◆内臓疾患の放散痛としての腰痛
卵巣や腎臓の疾患、虫垂炎などは時として腰痛といった形で症状が現れることがありますので、産後数日たって経験したことのない腰痛がおこった場合は要注意です。当然ですがこのような状態をご自分で判断することは難しいことですので、医療機関を受診し腰痛の原因を特定する必要があります。
産後の腰痛の効果的な治し方・セルフケアは?
産後は育児が忙しくなるので、腰痛は一日でも早く治したいものですよね。育児を含めた日常生活に影響しないようであれば、セルフケアを行ってみましょう。
◆1:姿勢の改善
① 立ち姿
日に何度か壁にまっすぐに立ち、まっすぐな姿勢を意識しましょう。鏡やカメラを利用して自分の姿勢を確かめることをおすすめします。
② 授乳姿勢
前かがみになりすぎてないか、後ろそりになってないかチェックしてみてください。そして、クッションや座布団を活用して、お母さんにとって楽な授乳姿勢を取りましょう。
③ 赤ちゃんのお風呂に入れる姿勢
赤ちゃんのお風呂(ベビーバス)場所を工夫し、前かがみにならなくても入れられるようにします。
④ 寝る姿勢
赤ちゃんと添い寝されている方は、布団やベッドの広さは十分かどうか考えてみましょう。
◆2:ストレッチ・産後ヨガ
授乳の後、赤ちゃんのお風呂の後、おむつ交換の後など1つ1つの動作の後にゆっくりとストレッチしまよう。産後ヨガも効果的ですが、できる範囲のゆっくりとした動きから行いましょう。急な動き、頑張りすぎのポーズは避けるようにしましょう。
◆3:骨盤ケア用品の使用
使用説明書を良く読み、正しく装着しましょう。
◆4:簡単な運動で筋力の回復
産後エクササイズは腰痛にも効果があるのでおすすめです。こちらも痛みがでないよう注意しながら行いましょう。
1~4ができない場合は病院や整体を受診されるもの良いでしょう。痛みが強くてお薬を使いたい場合、湿布薬を使いたい場合は必ず医師や薬剤師へ相談するようにしましょう。
病院や整体には行くべき?
セルフケアで対処できることもありますが、場合によっては専門家への受診も必要となります。
痛みの度合いが日に日に悪化してきている場合、または、赤ちゃんを抱っこするのが辛い、授乳姿勢がとれないなど日常生活に支障が起こっていれば、迷わず専門家へ受診しましょう。病院と整体院は、どちらがいいとは言い切れませんが、原因がわからない腰痛が急に起こった場合は疾患の見極めのためにも、まずは医療機関(病院)を受診されることをおすすめします。その上で隠れた疾患がないことが分かれば、通いやすい整体院を受診されるといいでしょう。
産後の腰痛に対する正しいベルトやコルセットの巻き方は?効果はあるの?
◆効果を得るために
産後の腰痛対策グッズとして、骨盤ベルトやコルセットなどたくさんの種類のものが市販されています。腰痛の原因が様々であるように、その効果についての評価も様々で、特定の商品のみが優れているということはないようです。
どのようなタイプの商品であっても説明書をきちんと読んで、必要なら助産師さんなど、専門家から装着方法のレクチャーを受けることをおすすめします。できれば商品購入時には試着ができると良いですね。
◆正しい使用法
骨盤ベルトは商品ごとに少しずつ巻く位置が違っていますので、購入したらどの位置に巻けばよいかを確認した上で毎回丁寧に位置を確認しながら着用される事をおすすめします。初回の購入では、産婦人科や助産院で採寸の上、購入するといいでしょう。
骨盤ベルトは産後であってもお腹を引き締めるものではなく、骨盤を支えるものですので大転子(股関節の横の少し出ている骨)・尾骨・恥骨をバランスよく支えることが重要です。
これらの位置がご自身の身体ではどの部分にあたるのかを確認して着用しましょう。
コルセット(ガードル)については産後に改めてサイズ採寸して、最適なものを身に着けるようにしましょう。引き締め効果を期待して小さめのものを着用すると、血流が悪くなり下肢のむくみやしびれなど、かえってトラブルを引き起こす可能性がありますので注意してください。
産後の腰痛で歩けないほどの激痛の場合はどうするべき?
激痛を伴う腰痛に襲われた場合は、まずは安静にし、専門医を受診しましょう。
そのような激しい痛みを伴う腰痛を「産後だから」というふうに捉え、放っておいてはいけません。
医療機関受診の際は、必ずご自分が産後であるということ、母乳育児をされている方は授乳中であることをきちんと受診先の医師や薬剤師に伝えることを忘れないようにしましょう。そうすることによって育児を行う際の抱っこの仕方や、赤ちゃんのお風呂の入れ方、おむつの替え方等赤ちゃんとの関わり方についてアドバイスがもらえることもあります。
筋力を回復しよう
セルフケアで使用する骨盤固定ベルトやガードルは不足している筋力を助けてくれるもの。最終的な腰痛解決にはご自身の筋力の回復が必要です。早く治したいからといって、骨盤ベルトやコルセットなどをつけっぱなしの生活をしてしまうと筋力はますます衰えていきます。産後すぐはこのようなグッズで筋力をサポートすることも必要ですが、それに加えてストレッチをはじめ、筋力アップを目指しましょう。そして徐々にストレッチからエクササイズへと移行し、筋力を妊娠前の状態まで戻していきましょう。産後に筋力の回復を図るのは腰痛対策のみならず産後の尿漏れや対策としてもとても大切なことで、これからの生活にも大きく影響することですので、ぜひ意識的に取り組んでください。
まとめ
産後の腰痛といってもその原因はさまざまであり、日常生活に支障をきたしているようであれば、ためらわずに医療機関を受診しましょう。セルフケアが可能な範囲にあるか否かを見極め、その上で無理のないセルフケアを行っていくことが大切です。
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